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女子医学生のお風呂場事情(1)ヤキ入れられた新入生

「ちょっと」
入学して間もなくの頃だった。

右も左も分からない新入生。
集団で行動することが多い時期で、その日も
3人連れ立ってお風呂に行った。

何やら、ちょっときつそうな上級生が、
服をばんばん脱ぎながら?
私たちに話しかけてきた。

その口調と目つきは、いい話ではなさそう。

まだまだかわいい私たちは、ちょっと緊張しながら
次の言葉を待った。

「あなたたち、ちゃんと挨拶しなさい。
朝は、『オハヨウゴザイマス』
昼は、『コンニチハ』
夜は、『コンバンハ』
って挨拶するのが、女子棟の決まりなの。
他の新入生にもちゃんと言っておいてよ。
お風呂に入るときには、ドアを開けながら、
『コンバンハ』って入ること!」

全く無表情で一気にそう言った上級生は、
すでに真っ裸。
(脱ぐのが早い!)

女子医学生のお風呂場事情(2)平謝りの私たち

いや、この時期、慣れない環境で新しい生活が
始まったばかりの私たちにとっては、
この出来事は、非常に怖かった。
(だって今でも憶えているくらいだからね)

特に同性の上級生にはにらまれたくない。

すでに白衣を着て、病棟実習なんかやっている
上級生って、新入生には神様みたいだったから、
そんな人たちからじろっとにらまれると、
萎縮しちゃうよね。

ちなみにうちのウサギは虫に出会うと、
ぎょっとして固まっちゃう。
(どうぶつなのに、困ったもんだ)

しかも、一度悪い評判がたつと、あっと言う間に
学生中に広まる閉鎖社会。

特に女子学生は少なかったから、ちょっとしたことで
注目されたし、なおさらだ。

すぐに私たちは、申し訳ありません、と
頭を深々と下げた。

女子医学生のお風呂場事情(3)何かと怒る学年って?

たいてい、新入生の態度に腹を立てていたのは、
はるか上の上級生ではなく、学年が一つか二つ
違いのちょい上の先輩。

学生生活も後半に突入しちゃうと、そんなこと、
どうでもよくなっちゃうのだ。

「最近の下の子たち、挨拶もしないよね」
「わざわざこっちから挨拶したのに、無視されたわよ」
「あの子、敬語つかわないのよね」

などと、さんざん文句を言うのも、最初の数年だ。

まあ、でも、言ってもらえなければ、知らないままの
ことも多く、ありがたいことなのだ。

忠告してもらえるのって、学生のうちだけだ。
医師になってしまうと、余程のことがない限り、
誰も何も言わなくなってしまう。

そこからが怖い。
自分の間違いに気付かなくなる。
時には天狗になっちゃうこともあるし。

だから、毎日、自分をきちんと振り返る時間を
とることが大切なんだよ。
(関心がある人は、医療者のメンタルヘルス
http://iryou.seesaa.net/ これ読むといいよ!)

女子医学生のお風呂場事情(4)貼り紙攻撃その1

気に入らないこと、気付いたことがあると、
上級生たちは、お風呂場の壁に、貼り紙をした。

もちろん、署名入り。
これは恐れ多くて、下級生は書けない。

どんな内容が貼り出されるか!

「夜中の洗濯機の音がうるさい」
「乾燥機から出した他の人の衣類はたたむこと」
「部屋のドアをバタンと閉めるな。静かに閉めること」
ご丁寧に、ドアの閉め方まで、図示して講義してあった。

手でノブを持って、ドアを静かに閉め、
がちゃりと音がしたら、手をそっと離すように。
と、図式まで書かれていたのには参った。

若干、病的な感じもするが、お風呂場には、こんな
紙が沢山貼り出してあったのだ。

服を脱ぎ脱ぎ、それをすみずみまで読むのが
日課?なのだ。

こんなこまかいことを言う人が医師になったら、
患者さんは息がつまるだろうな。

言っていることは全く間違ってはいないけど。
なんかね。

重要でないことは気にしない、というちょい適当な
性格が、医療者には必要かなって思うんだ。
自分の心を守っていくためにもね。

枠にはめないとダメな人って、患者さんも自分の
枠にはめこんじゃうから、それでトラブルになることも
多いしね。

女子医学生のお風呂場事情(5)貼り紙攻撃その2

こんな貼り紙もあった。
「世の中、水不足です。シャワー時、使用しない時は
流しっぱなしにせず、きちんと締めて下さい」

更にはこんなのも。
「三角コーナーの中には、不燃性のものは捨てないで」

流しの三角コーナーに、ビニールの小さい袋を
捨てたら、それを書き出されたこともあったな。

「自分の使用した食器は、自分で責任をもって
洗って下さい」
というのもあった。

こういうことは、個人差があるから、どうしようもない。

整理整頓された部屋に住んでいる人が、
使った食器やお鍋を1週間以上も洗わずに、
放置していたことがあった。

頭にきた一つ下の人が、異臭の漂う鍋を、彼女の
部屋の前に置いていた。
その様子を見ていた私たちは、やるなあと感心した。

きれいな服を着て、きれいな化粧をしている人が、
部屋の中はすごい状態のこともあった。

まあ、女子棟の内部なんて、こんなもんだ。

女子医学生のお風呂場事情(6)個性的な先輩たち

いろんなことがあったけど、多くの人は、結構
明るく楽しく生活していた。

少なくとも私たちの学年は、結構仲がよかった。
10年以上経った今でも、ときどき、プチ同窓会
なんてやっている。

あの頃、学生寮の女子棟には、変わった人も、
きつい人も、いたずらばかりする人も、
部屋にこもって勉強ばかりしている人も、
酒郷さんのように遊んでばかりの人もいた。

本当に多くの個性的な人たちが存在していた。

生活していたその頃は、嫌なことばかりが目について
住みにくい場所だと思っていたけど、何年も経って
振り返ってみると、さまざまな出来事が、なぜか、
光輝いて見えるのが不思議だ。

ドアの閉め方をレクチャーしてくれた先輩も、
日々、後輩の医師たちを細かく指導しているだろう。

鍋を捨てられた先輩も、飛び抜けて優秀な人だった。

鍋を捨てた先輩は、男性以上に仕事をばりばり
こなす医師らしい。
上の医師を怒鳴ったとか、後輩を泣かしたとか、
武勇伝が聞こえてくる。相変わらずだ。

大奥にはいろんなことがあるけど、こんな生活、
学生時代にしかできないから、十分に満喫してね。

新しい学生寮ならぬ、学生マンション建設が予定
されているけど、ちょっと寂しいな。
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