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J医科大学、2年生に突入だ〜(1)戦々恐々とした日々

新しいことばかりで、戸惑っていた1年次も
あっという間に終わりに近付いてきた。
J医科大学の次の新入生もすでに公表され、私たちは
とうとう、「恐怖の」2年生になろうとしていた。

一般教養課程が修了し、基礎医学の学年に
突入するからだ。
今は入学してすぐ、基礎医学が始まるから、
不安に思っている暇はほとんどないけどね。

2年生からは、戦々恐々とした日々。
一つ上の先輩たちの顔つきを見ていれば、
どれほど大変な時期が、容易く想像がつく。

いっつもしかめっ面、眉間にしわ寄せ、不機嫌、
にこりともせず、年中、睡眠不足の顔だ。

その時期の先輩からの年賀状に、なんと、
「戦々恐々」と、それだけが書かれていたよ。
年賀状を見るなり、絶句しちゃったよ。

この一言は重いよね。

J医科大学、2年生に突入だ〜(2)厳しい教官たち

この学年からは試験に落ちても、あの生物の温厚な
教授のようには、「頑張りなさいね」なんて、
励ましてはくれないよ。

英語の教授のように、「君はよく頑張ったねー」と
満面の笑みを浮かべて、廊下で肩は叩いてくれない。

基礎医学からは、ついてこれない学生は、容赦なく
切り捨てられるような印象だな。
もちろん温情はどこかにあるだろうけど、
それくらい厳しい生活が待っているんだよ。

だって、医学という学問は人の命に関わっているから。
中途半端ではだめなんだ。

教官の雰囲気も、一般教養の先生達とは
全く違っていて、とっても厳しい顔。

北口デビューは何とか耐えられるけど、留年は
嫌だよね。
当時はね、女子学生で留年した前例がなかったんだよ。

過去の女子学生は優秀で真面目だったと、
ことあるごとに聞かされていたしね。

プレッシャーだよねー。

J医科大学、2年生に突入だ〜(3)真新しい教科書

1年生最後の試験も無事終了。
北口デビュー、生物学再試も無事終了。
同級生たちは、皆そろって進級できた。
よかったよかった。

でも、お気楽に喜んでばかりはいられない。
新学期初日から、解剖学の実習が始まるのだ。

春休みに入ると、部屋の本棚には、分厚い
基礎医学の教科書が新品のまま並ぶ。
これだけのことを暗記しろってか!

解剖の本も、英語ばっかり。
すべて覚えなくちゃいけないらしいし。

おっかなびっくり教科書を開けては、
ふ〜っと閉じた。
ほんとに気が遠くなりそうだ。

その厚さを横目で見ながら、これからの
数年を想像して、憂鬱になってくる。
春休みなのに、全然楽しくない。

新しいことを学ぶ期待ももちろんあったけど、
不安の方が強かったな。

J医科大学、2年生に突入だ〜(4)みんな必死に猛勉強

本棚に並んでいた新品の教科書が、常時開いたまま
机の上に置かれるようになったのは、それから
間もなくのことだった。

実習の前日には、夜おそーくまで予習をする。
これは必須だ。

実習中に、試問攻撃があるからだ。
答えられないと、喝が飛ぶ。
こわいこわーい先生たちが、眼光鋭く
教室内をコツコツとまわるのだ。

大抵の学生が、何かに取り憑かれたように、
机に向かって勉強する時期がきた。
酒郷さんだって、例外じゃない。

机の上にホコリがたまっていた数カ月前とは、
天と地の差だ。
生活のパターンも全く異なっていたよ。

J医科大学、2年生に突入だ〜(5)来年の今頃は…

戦々恐々の意味が分かってきた頃、一つ下の
新入生が、屈託のない顔をして入寮してきた。
新入生対象の行事や講義、キャンプ、といった、
気楽な毎日を送りはじめた。

1年前はあんなに大学から大事にされていたのかー。

それが今はどうよ。
ムチが飛んできそうなスパルタ教育。
びしびしと鍛えられている感じ。
1年前とは、全く大学の対応が違う。
当時はあんなにちやほやと大事にされていたのに。

笑顔の1年生を尻目に、私たちはにこりともせず、
大学と学生寮を往復した。

「1年前は、あんなに気楽な顔をしていたんだね」

ホルマリンの染み付いた白衣を片手に、
厚い教科書の入ったショルダーバッグを
肩に食い込ませ(重いんだ、これが)、
ムーミンたちとつぶやいた。

でも、うらやましいとは思わないな。

「でも、あの子たちも、来年の今頃は…」

うっしっし、と、かわいい顔をしながら、
ムーミンはブキミな笑い。
でも同感!
たまには意見も一致するさ、ね、ムーミン。

J医科大学、2年生に突入だ〜(6)辛いけど嬉しいんだ

北口デビューをすでに果たしてしまった私にとっては、
気楽な1年生より、確実に進級できたことの方が
とっても大切だったのだ。

「先輩、解剖、大変ですよね」
という新入生の言葉と眼差しに、尊敬の色が
隠されていることをすでに知っていたからね。

殊更に大変な顔をしてみせながらも、嬉しいんだよ。

こんな気持ちが、この時期をくぐり抜ける
原動力になっていたんだ。

医学部という場所は、ひと学年の差がとても大きい。
知識も経験も顔つきも、たった一つ違うだけで、
かなりの差があったんだ。

まだまだ低学年真っ最中の2年生でも、新入生からは
頼りにされていたんだよね。

さて、次は、今でも語り継がれる私の武勇伝。
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