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恐怖の組織プレパラート試問 その1(1)組織学って、なに?

医学部2年生で、組織学という学問を学んだよ。
組織学と聞いても、ピンとこない人もいるので、
簡単に説明しようね。

たとえば、腎臓。
肉眼では6〜7cm大のそら豆の形をした実質臓器。

それを顕微鏡で見るとどんな形態をしているのか、
どんな機能があるのか、それを学ぶのが組織学。

組織学を学ぶには、準備が必要だよ。
顕微鏡で観察できるような標本を作らなきゃ
いけない。

さてここで、標本の作り方を説明しよう。
取り出した組織をまず、細かく切る。
そして今度はそれをホルマリンで固定し、脱色。
脱色させるには、アルコールやアセトンなどに
浸けて、組織の中の水分を取り除く。

次にそれを50〜60℃に熱して溶けた
パラフィンに埋め込んで、今度は冷やして硬化。

通常は固定したまま凍結させ、ミクロトームと
呼ばれる機械で、薄く、薄く切り出すのだよ。

それをプレパラートと呼ぶガラスの上に
そーっと張り付けて、染色して、標本になる。
みんな、知っていたか?

恐怖の組織プレパラート試問 その1(2)標本ができるまで

いやいや、大変な過程を経て、プレパラートが
できあがるのだ。
簡単じゃないんだよね。

学生時代は、できあがった標本ばかりを相手に
していたから、今言ったような作り方は、
実際に見たこともないし、知識としてしか
知らなかったんだ。

それを実際に自分の手で、ミクロトームと呼ばれる
機械で切り出しをしたのは、医師になってから。

卒後、私の勤務した研修病院、名前を出すと、
福井県立病院(ERで有名な病院だよ)では、
医師になって最初の2週間は、医療以外の部門で、
勉強することになっていたんだ。

たとえば検査室、病理室などで、医師以外の
人々の仕事を見る期間があった。

そこで血液検査のやり方を教えていただいたり、
標本の切り出しの方法をならったんだよ。

実際、手術などで取り出した臓器が、顕微鏡で
観察できるようになるまでを体験し、
標本をミクロトームで切り出した。

簡単に見えるんだけど、これはとても難しい。
ほとんど職人芸といってもおかしくない
器用な手つきで切り出しをしていたよ。

私たち研修医がもたもたとやっている横で、
彼らは、シャッ、シャッと手際よく、
薄い薄い切片を切り出し、水に浮かべて、
プレパラートの上に乗せていた。

素人は薄く切り出せないんだ。
どうしても厚くなっちゃう。
これだと顕微鏡で見ても、重なっちゃってダメ。
薄く切り出せないとね、標本にならないんだよ。

組織学を学んだ6年後に、ようやく標本の
貴重さが理解できたんだ。

恐怖の組織プレパラート試問 その1(3)100台の顕微鏡

学生時代、組織学の実習の時は、すでに、
教育目的のための標本がきちんと作られてあったよ。

人体、すべての臓器を学ぶので、一人の学生につき、
150枚以上のプレパラートが準備されていた。

組織学教室の部屋の、それぞれの机の中に、
古い木の箱が置いてあった。
その中にプレパラートが順序よくきれいに
並べられ、大切にしまってあったよ。

途方もない時間と手間をかけてできあがった
プレパラートを、無造作に扱うことに関しては、
厳しく指導された記憶がある。

手荒く扱って、床に落として割ってしまうなんて、
許されなかった失敗だったな。

あれだけ面倒な工程を経ての貴重な標本だから、
尚更だね。

また驚くことに、学生一人に一台の顕微鏡が
与えられていたよ。
学生はだいたい、100名前後だから、
100台の顕微鏡がずらりと並べられた
大きな実習室に入って、学生たちは
それぞれの場所に座って、顕微鏡をのぞいたんだ。

100台の顕微鏡が並んでいる大きな実習室の
光景って、圧巻だよ。

恐怖の組織プレパラート試問 その1(4)キミたちは、守られているよ

当時は、こういう環境が、当たり前だと思っていたな。
自分を含めた周囲の光景も、当たり前だった。
顕微鏡が、一人に一台与えられていることに
思いを馳せる余裕もなかったな。

でもね、今思うと、私たちは非常に恵まれた
環境の中で多くの人に守られて、そしてすべてが
与えられた生活をしていたんだなって思うんだ。

どれほどの手間をかけて、私たちを大切に
教育してくれたのかなって、今になって
思うことがあるよ。

講義一つにしても、そうだよ。
90分の講義のために、何日もかけて、
学生に理解してもらおうと、工夫をしている
先生たちも多いんだよ。

当時、そういうことに気付いていたら、
一つ、一つの実習や講義を、もっと真剣に
受けていればよかったな。
(さぼってばかりいた私)

どうしてあの時、義務的に勉強していると
感じていたのかとても不思議。
自分の置かれた立場に感動しながら
生きることができたら、もっと素晴らしい
学生時代を送れただろうに!
感動できる材料はね、医師になってからよりも、
学生時代の方が豊富だよ。きっとね。

ま、人生というものは、こんなもんだ。
自分の置かれている環境を、その時は
客観的にみれないもんだよね。

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