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恐怖の組織プレパラート試問 その2(1)今はパワーポイントさ

組織学の実習も、解剖学の時と同じで、
実習の前には必ず教授の講義があった。

教授のかっちりした講義を午後に聞いた後、
解剖の時と同じようにぞろぞろと薄暗い
階段を降り、実習室に入った。

教授はとても几帳面でこまかくて、まるで、
印刷されたような字と絵を黒板に書く。
ほれぼれするほど整った字だ。

でも、あまりにもこまかすぎて、それを
ノートに写し取るのは、至難の業。
私はとっとと諦めた。

今は退官なさったが、時々講義に来ている
らしい。
今でもあんなにきれいな文字で講義をして
いるのか、そのへんの学生に聞いてみた。

「今は、パワーポイントですよ!」

なるほど。時代は変わっていくものだ。
でも、あの名物講義がパワーポイントに
とって代わられたのは、とっても惜しい。

恐怖の組織プレパラート試問 その2(2)目を開けて寝るウサギ

組織の講義や実習に出る時は、解剖の時のように
ぼろぼろの服ではないけど、ほとんどの学生は、
何となくぼさっとした格好だった。
格好に気を使う時間なんて、ほとんどないからだ。

解剖、組織をはじめとして、日夜勉強、実習に
明け暮れていたあの時期は、皆、余裕のない顔を
して、かつ、悲壮だったな。

毎日、本当に何かに追い立てられるような、
そんな日々だったし。

一様に青白い顔をして、昼食後の講義には、
うとうとと居眠りしていた学生もちらほら。
私はどこでも眠れるタイプだから、講義中、
しっかり起きていることって、
ほとんどなかったな。

疲れすぎて、外来の途中に、患者さんの前で
居眠りをする医者の友人はいるけど、さすがに
私はそこまでではないけどね。

でもうちのウサギも、座ったまま、目を開けて
寝ていることがあるよ。
そんな時の目に力がないことと、じっと見ていると
時々、頭ががくっとして、ハッとした顔をするから、
寝ているのが分かるんだよね。
「横になって寝れば」っていつも忠告するんだけど。
いうこときかないし。

恐怖の組織プレパラート試問 その2(3)ケンタッキーのおじさん

組織学の教授は、私と同じ福井出身。
2年生になって、教授と初めて出会った
わけではないのだ。

入学してすぐ、福井県人会「新入生歓迎コンパ」が
開かれた。
その場所で、教授と出会った。

新歓コンパは、一応、新入生がメインだから、
教授の両脇に、私とよこちゃんは座ったよ。

それまで、「教授」と名のつく人とかかわりなんか
なかったから、横に座ったときには、メチャメチャ
緊張しちゃった。

でも教授は、ヘンな威圧感もなく、穏やかで、
そう、たとえて言うなら、ケンタッキーの
カーネル・サンダーソンって言うんだっけ、
あのおじさんに似ていたな。

今でもケンタッキーのおじさんを見ると、教授を
思い出してしまう。

そんな先生だったけど、やっぱりね、
ごまかしのきかない鋭い目つきをしていたな。

恐怖の組織プレパラート試問 その2(4)自分の居場所

医学生時代っていうのは、何というか、
いろんな意味で、立ち止まって考えなきゃ、
前に進めない葛藤の時期があるかな。

もちろん、そんなこと考えないで、すいすいと
前に行ける人も多いだろうけど、私は器用じゃ
ないから、ダメだったな。

奥深い、医学という学問に直面して、自分の存在の
小ささに気付いたときとか、医学部に所属している
はずなのに、居場所がないように感じたときとか、
あとはそうだな、能力の限界を超えるほどの
試験、実習に追われて全く余裕が無くなるときなんか。

ふと立ち止まって、前に進めないことがあった。
悩んで、悩んで、どうしようもない時、
私はいつも教授の研究室のドアをノックしたんだ。

恐怖の組織プレパラート試問 その2(5)教授の器の大きさ

教授は研究や仕事をしていても、学生が訪れると
その手を止めて、きちんと話を聞いてくれた。
今思えば、こういうことって、なかなかできないよ。

教授も、ドイツ語の花梨先生と一緒で、
どんなにくだらないことを言っても、その言葉を
決して否定しなかったな。

鋭い視線は変わることはなかったけど、温厚な
笑みを浮かべて、一つ一つの言葉を、丁寧に
聴いて下さった。

そして、教授の部屋を後にする時は、悩んでいた
ことなんか忘れてしまって、本当にハレバレと
した気持ちに変わったんだ。

恐怖の組織プレパラート試問 その2(6)教授、ファーストネーム呼び、斬り!

新入生歓迎会で初めて教授に出会った時、
私は先生や先輩に勧められるままビールを飲んで、
とてもいい気分になっていた。
(ま、いつものことだ)

調子よくなった私は、教授のファーストネームを
呼びながら、からんじゃったよ。

「タクマ先生。タクマ先生。私ね、本当に
医者になりたかったの!」
って、怖いもの知らずの私は、新入生の時に、
教授に向かってそう言った(らしい)。
注:記憶にない

ろれつの回らなくなってきたあやしい口調で、
教授に当時の思いを素直にぶつけていたらしい。

「先生、やーっと、医学部に合格できましたっ!」

そんな言葉を、タクマ先生は、にこにこしながら
聞いていたらしい。

「これから、一生懸命勉強して、いい医者に
なりたいと思いまーす。タクマ先生、この気持ち、
分かってくれますよね!」
と、まるで愛の告白のような宣言をしていたようだ。

初対面からファーストネームで呼んでいた私を、
先輩たちは、ニヤニヤしながら止めずに見ていたらしい。
(止めて欲しいよね)

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