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恐怖の組織プレパラート試問 その4(1)恐怖の試問

しかしそんな素敵な先生でも、私たちにとっては
敵だった時期がある。

「恐怖の組織プレパラート試問」ってやつだな。

組織学実習のまとめとして、そのような名前の
ついた恐怖の試問が、毎年恒例で存在したのだ。

5名ずつ、医局の奥にある薄暗い部屋に通される。
(薄暗いのは、顕微鏡をのぞくためだ。けっして
怪しい部屋ではない)

ふと部屋の中を見ると、顕微鏡が、丸テーブルに
5台、円形に置かれている。

中央に、タイムリミットを知らせるバカでかい
時計が、どんと置かれていた。

学籍番号順に呼ばれた学生たちが、5人ずつ
その部屋に入り、顕微鏡の前に座らされる。
なんだ、なんだ、何が始まるんだ、という、
小児科の教授をやっつけたあの子供の気分だな。

恐怖の組織プレパラート試問 その4(2)引きが悪いとダメなんだ

すると、不気味な笑みを浮かべた教授が登場する。
これを毎年、楽しみにしているのだろう。
そんな笑みだ。

そして教授が、学生一人一人に5枚セットになった
プレパラートを手渡す。

引きがよければ、ラッキー。
引きが悪ければ、もう一度、出直して下さいね。
つまり、再試験を受けなさいってことになる。

引きがいいっていうのは、誰が見ても答えられる
臓器の標本が手元に来たことを言うのだよ。

もう体験したキミたち、
引きはよかった? 
それとも、悪かった?
(私は悪かったよ、くそー)

恐怖の組織プレパラート試問 その4(3)教授の心理作戦

なんとこの試問、時間制限がある。
時間内に、その5枚のプレパラートのうち、
3枚の臓器名を答え、更に、1枚1枚につき、
その臓器に関しての教授の質問に答えることが
できれば合格という、とんでもなく困難な
試問だったのだ。

しかも顕微鏡がある場所は、さっきも言ったけど、
暗幕が引かれていて、なにやら怪しげ。
これだけでも心理的に学生を追い詰める。
これも教授の心理作戦か!

言い訳させてもらうと、標本が何なのか
分かっても、緊張のあまりど忘れしたり、
教授の不気味な雰囲気に呑みこまれて、
パニックに陥ることもあるのだ。

更に、見たことのないような標本が
混じっているから、困るよね。

ま、医者になるには、強い精神力も必要って
ことだね。
あ、あと運の良さ。

恐怖の組織プレパラート試問 その4(4)朝まで勉強

身体のどの部分が試験に出るのかは、分からない。
だから学生たちは「恐怖のプレパラート試問」という
言葉が、学生寮の中で何かと話題になる時期には、
講義の終了した後、自主的に実習室に出没した。

机の引き出しにある、更に木箱の中に保管されている
大切なプレパラートをごそごそと取り出して、
それまで実習で書いたスケッチを見ながら、
分厚い教科書を開きながら、必死で勉強するのだ。

恐怖の試問の前日などは、大半の学生が、
大学に泊り込むような感じで、朝まで実習室に
こもっていた。

実習室では飲食禁止だったから、北口のロビーで
寂しくパンなんかをかじっている学生もいたな。

恐怖の組織プレパラート試問 その4(5)ヒポクラテスの道

何のために大学に来ているのか不思議なんだけど、
実習室に入らずに、北口のソファで、延々と
眠りこける同級生もいたな。

「あんた、寮に帰って寝れば?」
って、何度声をかけようと思ったか。

大学にいるというだけで、勉強した気がするらしい。

私も夜中の2時頃までは、実習室にいたよ。
それからふらふらとしながら、大学から徒歩5分の
寮に帰って寝たよ。

大学と寮のたった5分の道のり。
銀杏並木があって、とても綺麗な道だったな。

この5分ほどの道の中で、私たちは笑いあい、
励ましあいながら、一歩一歩歩いてきたんだ。
そうやってみんな、医者になったんだよ。
その道は、私にとっての、ヒポクラテスの道だ。

うーん、青春。
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