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恐怖の組織プレパラート試問 その5(1)試問開始

恐怖の組織プレパラート試問が始まった!
学籍番号順だから、私は最後の方。
(本名は、や、から始まる)
(ちなみにムーミンは、も、から始まる)

数時間はまだまだ勉強する時間が確保できる。

最初のチームは、1人をのぞいてすべて不合格。
その噂が流れ、残りの学生の中に、まじかよ〜と
悲壮感がただよった。

非常に優秀で、誰もが合格だと確信していた
学生たちが次々と倒れ、勉強もろくにせずに、
ソファで眠りこけていたやつらが、ピースサインを
出しながらパスしていった。

悲喜こもごものドラマが目の前で展開された。

恐怖の組織プレパラート試問 その5(2)網膜十層構造、言えますか?

「次の学生さん、入って」
秘書さんに声をかけられ、いよいよ今度は私たちの番。
教授が県人会の先生じゃなければ、こんなに
緊張することはないのに。
同県だからこそ、一発合格のプレッシャーが
かかるのだ。

ムーミンの標本は、大腸の縦切り。
「これは精巣です!」
さっぱり分からなかったムーミンは、一か八か、
適当に答えた。

胃や結腸は楽勝標本。
でも切り方が縦切りだと、さっぱり分からなくなる。
(通常は、輪切りで出てくるからねー)

「はい、残念ですが、違います」
にこやかに笑いながら、教授は言った。

「これは網膜です!」
ムーミンは次に自信を持って答えた。
「はい、その通り。じゃ、網膜十層構造を
言ってごらんなさい」
「うっ」
ムーミンは言葉につまった。

「はい、残念でした〜」
教授の勝ち。

「網膜十層構造が言えなくて・・・」
彼女は、悲しげにつぶやく。
今でも、答えられなかった悔しさを憶えているらしい。

恐怖の組織プレパラート試問 その5(3)私も不合格

さて、私は、というと、何が出たかも全く
記憶にない。
結果は、引きが悪くて不合格。
見たこともないような標本が出てきたよ。

がっくりと肩を落としながら、部屋を後にした。

私たちのチームは、全敗。
再試験に臨むために、また闘いの日々が始まった。

太谷地といういたずら好きの悪友は、時間制限が
あることに目をつけて、すごいことをしてくれた。
顕微鏡の前に置かれた時計を、教授の目を盗んで
操作したのだ。

教授が他の学生の顕微鏡を覗いているその隙に、
時間を延長させた。
それを2回もやったもんだから、ばれちゃった。

いくら待っても時間が知らせないので、
不信に思った教授が何度も何度も時計を
見つめていたようだ。

学生たちは、笑いをこらえるのに必死だったようだ。
皆、知恵を絞って、闘ったのだ。

恐怖の組織プレパラート試問 その5(4)今でもプレパラート試問はあるのかな?

今も、「恐怖の組織プレパラート試問」はあるのかな。
腰をかがめながら、教授は、それぞれの顕微鏡を
何度も何度も覗いていた。

その教授もその後、大学を退官され、地元の
福井に戻られた。
福井に戻って、地域の医療の活性化のために
T病院という立派な病院を立ち上げた。
そこでは、J医大の卒業生たちが中心になって、
質の高い地域医療を展開している。

消化管の縦切りの標本は、今でも試問に使われて
いるのだろうか。
私の使っていた顕微鏡や木の箱のプレパラートは
健在だろうか。

講義をサボり、実習だけ出ている学生は今でも
たくさんいるのかな。
写真に撮られるかもしれないよ。
油断しているとね。

あの几帳面な字で、綺麗な絵で、黒板に組織学を
講義して下さったタクマ先生のあの時間は、宝だった。
それが分かるのに、15年以上も経っちゃうんだからな。
人間って、しょうがないな。

もし、もう一度、学生時代に戻れるのなら、
私はもっと違った学生生活を送るだろうな。
もっとまじめに、もっとわくわくとしながら、
毎日を送ってみたいな。
(と、理想だけ)

実習や試問や試験は、もう勘弁して欲しいけど。
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