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J医科大学入試・個人面接
【1】個人面接、教授との闘い

気がつくと、集団面接の一時間、
まるで私のために存在したかのような時間が過ぎていった。
そしていよいよ次は個人面接である。

集団で教授陣3名の前に並ぶのと、
たった一人でその前に並ぶのとでは、緊張の度合いが違う。

私は性格的にあがってしまうタイプではなかったが、
やはり思った通り、
完全にリラックスした状態で個人面接が始まった。

時間的には20分ほど。
真ん中の教授がちょっといじわるで、
突っ込みばかり入れてきた。
結婚するのかしないのか。
 
そんなの、分かるはずない。
相手がいなきゃ結婚したくてもできないだろう。
面倒くさくなって、私は結婚なんてしないよ、と言い張った。

しかしその教授は、
そんな考えはダメだと言わんばかりに憤慨しながら、
更に突っ込みを入れてきた。

「もしこれから結婚してもいいと思う相手が現れたら
どうするのか」とか、

「どうしてその年で、そんな断定したことが言えるんだ」とか、
さんざん怒られた。
 
一体これは本当に医学部の面接なのか?

「いい人が現れたら、結婚も考えます」などと、
もう少し賢く、にこっと笑って答えておけばよかったのに、
それができない年頃だったのだ。
posted by ゆうき at 10:26 | Comment(6) | TrackBack(0) | J医科大学入試験個人面接

J医科大学入試・個人面接
【2】 どうして医師になりたいの?

互いに子供の言い合いのようなやり取りをして、
場の雰囲気が気まずくなりかけた頃、
隣の精神科の医師が、助け舟を出してくれた。

(さすが精神科医!)

「どうして医師になりたいのですか?」

という大変にマニュアル的な質問で、話題を変えてくれたのだ。
この質問は、ほとんどの受験生にする質問だろう。

それに対してどこかで聞いたような優等生的な答えを
準備して語る人がいるけど、あまりよくないかも。

面接官は、準備していた答えか、真実、
心の奥から出てくるものなのかを間違いなく見抜く力を
持っているからだ。それができるからこそ、医師なのだ。

私はこう答えた。
「どうしてか自分でも分からない。
でも、医師になりたいという気持ちは間違いがない」

もし私が面接官だったら、この答えは、ぐっとくるかも。
今も同じ問いをされたら、同じように答えるだろう。

医療現場には、いい人も悪い人もいる。
嬉しいことも嫌なこともあるけど、
落ち着いた目で世の中を見つめていると、
人間って捨てたもんじゃないなと思うことの方が多いからだ。

だから、医師になった。
人の多様な面を数多く見てきた。それがおもしろい。
そんな答えに、精神科の医師は、にこやかに微笑んでくれた。

友人の土屋くんは、なぜ医師になりたいのか?
という問いに、こう答えたらしい。
(本人の許可をとって教えるね)

「家にお金がないから…」

(J医大は、特殊な役割のある大学だから、
ほとんどお金がかからないんだよ)

面接官たちは絶句したらしい。
奨学金をもらう予定になっていることも、
彼は淡々と説明したようだ。

私が面接官なら、合格させてあげたい。
ちなみに彼は今、優秀な整形外科医。
今、勤務している病院の院長になる能力を持っているし、
一生懸命だし、多くの人に好かれている。

面接官の目に狂いはなかったってこと。
 
それ以外の質問は、もう覚えていない。
ちなみに小論文の内容は、華岡青州の妻が題材だった。
家族を使った人体実験の是非を問う問題だった。
posted by ゆうき at 10:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | J医科大学入試験個人面接

J医科大学入試・個人面接
【3】教授ととりまき女子学生

そうして私は合格した。
そしてあっという間に数年の月日が流れた。

最終学年である6年生。
夏を過ぎた頃から、何十科目もの卒業試験が連日
繰り返されていた。

試験の日はうら若き女性も全くのスッピンである。
試験の最中に悠長に化粧なんてしている奴がいたら、
それは試験を捨てているのか、
よほどの自信があるのかどちらかだ。

(ばっちり化粧して試験受けている人いたら、ゴメン)

当然私たち女子学生も化粧っけなし。
服もその辺に落ちているようなものを着て、
ぼろぼろの状態で試験に臨み、その姿で職員食堂に行き、
ぼそぼそとうつむきながら昼食をとっていた。

「ここ、いいかな?」

顔を上げると、人気のある小児科の教授が
トレーを手に立っていた。

「どうぞどうぞ」

私たちはスッピンのまま、教授に微笑んだ。
教授と昼食をとるのはこれが初めてではない。
時折教授から、また私たちから寄っていって
昼食をとることがあった。

臨床実習で各科の教授と顔見知りになると、
もちろんキャラクターもあるが、世間話ついでに
よくご一緒することが多かった。

特に当時は医学部の女子学生が少なかったため、
覚えもよく、得なことが多かったのだ。

「どうだね、卒業試験は」

決まり文句のようにその教授は聞いた。

「はあ、ぼちぼちです」

分かったような分からないような返事だ。
私の友達は表面だけだが内向的なタイプが多く、
このように教授と対面するような緊張の場では、
大抵私が教授と話をする役割だった。

私と教授が話しているのを、
彼女たちはいつも黙って聞いていた。
時折話を彼女たちに振るのだが、そうやっても、
うつむいていた。

その教授は見た目、怖い顔をしていた。
知り合うととても優しくいい先生なのだが、
黙っていると怒っているような顔をしていた。
posted by ゆうき at 10:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | J医科大学入試験個人面接

J医科大学入試・個人面接
【4】教授と手強い子供たち(1)

その教授で記憶に残っている笑い話がある。

あるグループ4人が臨床実習で、
教授の外来を見学していたらしい。
小児科だから、相手はお母さんと子供。 

ある日、教授の前に腰掛けたその子供、
5歳くらいのガキだったが、そのガキが、
突然教授を指差して、

「あー! ラーメン屋のおっちゃんや!」と叫んだ。

見学している学生たちは、皆、顔面蒼白になった。
ガキはその緊迫した雰囲気にも気付かず
(だからこそガキなんだが)、繰り返し叫んだ。

「ラーメン屋のおっちゃんやって! 
なあ、おかあちゃん、おっちゃんや」

そして更にすごい言葉が続いた。
「なあ、おっちゃん、ラーメンつくって!」
お母さんも教授も、看護師も学生も、しばらく黙りこくった。

教授の顔が次第に赤くなり(もともと色白)、
側頭部の血管が浮き上がってくるのを感じた。
どうなるかと思いきや、皆の見守る中、
教授は深呼吸を繰り返すと、
何事もなかったかのように診察を始めたのだ。

さすがはプロ、皆感心した。
後ろで拍手しようかと思ったほどだ。

しかしその子供とお母さんが出ていった後が
これまたすごかった。災難なのはその時の学生たちで、
いつも以上の厳しい質問攻撃と(もともと厳しい)
いじわるが続き、ぐったりして寮に帰って来たようだ。
posted by ゆうき at 10:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | J医科大学入試験個人面接

J医科大学入試・個人面接
【5】教授と手強い子供たち(2)

もう一つ、面白い話。
相手が子供だから、いろんなことがあるのだろう。
教授回診の時である。まるで白い巨頭の世界。

教授、助教授、講師、助手、ただの医局員、
そして研修医、更に学生と何十人もの白衣を着た集団が
病棟内を闊歩するのだ。

気の弱い子は、泣き出すことがある。
しかしある日の回診、相手は手強い子供だった。

一つの病室に白衣軍団が入って来た。
教授回診初体験のその子供、5歳くらいでガキだったが、
大人を大勢引き連れた教授を見たとたん、
興奮して騒ぎ出した。

「なんだなんだ、何が始まったんだ!」

子供は叫んだ。

「教授の回診ですよ」と、教授の傍らにいた師長が優しく諭した。

その子供は、教授の顔をじーっと見て、更にこう続けた。

「教授って、えらいのかあ?」と、他の白衣軍団に問いかけた。

教授はすこーし微笑んだ。

「教授って、金もってんのかあ?」と、更に皆に問いかけた。

医局員たちが、教授の目の届かないところで、
笑いをこらえ始めた。 今度は教授は微笑みを、
にやりとした笑いに変えた。
そして子供の言葉を全く無視して、
おもむろにお腹を触りはじめた。

診察中の教授の顔を、
下からじーっと食い入るように見つめていた子供は、
とどめに、「まゆげ、ビーン!」と、
教授を指差しながらそう叫んだのだった。

教授のまゆげは立派だった。

もう誰も止められなかった。
クスクス笑いが辺り一面に充満した。
教授の顔からは笑みが消え、無表情でその部屋を後にした。

(その後の質問攻めで大変な目にあったのは、研修医)

posted by ゆうき at 10:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | J医科大学入試験個人面接

J医科大学入試・個人面接
【6】ようやく明かされる真実と教授の涙

そんな過去を持つ、
人間的にとても魅力のある教授だった。
教授と食堂で話をしながら、
昔の出来事を思い出していたそんな時。

「そういえばもう、入試の時期ですね」
この言葉が事件の始まりだったのだ。
「先生もお忙しい中、面接、大変ですね」
と、私はニコニコしながら言った。

教授は、表情を変えずにこう聞いた。

「そういえば君、受験の時の面接官って、
今でも覚えている?」

「いえ、覚えていません。
左にいた精神科の先生は覚えていますけど」

「あっ、そう」

それきり話が続かなくなると困ると思った私は、
この話題を更に続けた。

私はこう見えても、結構人に気を使う人間だったのだ。

「そういえば誰だったか覚えていませんが、
面接官の中に、とってもいじわるな先生がいたんです。
結婚するのかしないのか、とか、
しないって答えたらすごく突っ込まれて、
本当にいじわるでしたね。
私も負けずに言い返しましたけど、あれでよく合格したもんですよ」

そう言って屈託なく、あっはっはと笑った。
徹夜続きの試験あけで、気分がハイだったのだ。
しかしいつもつられてにやっと笑う教授が笑わない。
無表情を通している。

あれっ?と思いながらしばらく教授の様子をうかがっていた。
そして沈黙の後、 教授はぼそっとつぶやいた。
 
 「それ、僕だったんだよ」

 「え?」

私は聞き返した。

 「僕なの」

私は大量にお酒を飲んでも、全く赤くならない体質なのに、
みるみる自分の顔が真っ赤になるのに気付いた。
しかも化粧っけのない状態で、その変化は全くカバーされない。

 「先生、だったんですか…」

その問いに、教授は黙って肯定した。

「すみません。先生、本当にごめんなさい」

隣の友人たちは、うつむきながら笑っていた。薄情な奴らである。

今さら言い訳してもどうしようもないし、
私は心の底から教授に謝ったのだった。

あの時の面接官が誰だか判明して、
私は6年間の謎が解けたような、そんな気分だった。

その後の教授の話だと、自分が面接して入学してきた学生は、
やはり入学後も気になるらしく、
ずっと親のような目でその学生たちの成長を見守っている
とのことだった。

私のことも強烈に記憶に残っていたようで、
ずっと6年間、私の動向を心配しながら、
見ていて下さったようだ。そんな親心もつゆ知らず、
私はお気楽に学生時代を送ってきたらしい。

卒業式の後、卒業生と先生たちで、記念写真を撮った。
その後に皆が輪になって、学生教員関係なく肩を組みながら、
「乾杯」を合唱した。

学生たちの前で、その小児科の教授は、
卒業生と一緒になって泣いておられた。
その涙を見た時に、私はこの先生が面接官で
本当に幸せだったと心から思った。
posted by ゆうき at 10:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | J医科大学入試験個人面接
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