Google
トップページに戻る

真夜中の白衣1(1)J医科大学の看板見える?

私の部屋の窓からは、広いグラウンドと、
新幹線がガーっと通過する光景が見渡せた。

下りの新幹線の右窓から、「J医科大学」と
グラウンドに真一文字に看板が並んでいるのが
目に付くはず。
大きな文字だから、誰でも見えるから見てね。

まあ、宣伝のために誰かが置いたんだね。

その文字の向こうにある茶色い建物が学生寮。

夕方になると、野球部の練習の声や、
陸上部のかけ声などが聞こえてくる。

夕暮れ時、野球部の、カキーンと球を打つ音を
部屋で聞きながら、電気もつけずにぼーっと
しているのが好きだった。

学生のころは、ただ、何をするでもなく
ぼんやりと部屋にいるのが好きだった。
そして、運動部の練習の音を遠くで聞きながら、
ご苦労なことで、とつぶやいた。

今もウサギが、せっせと毛づくろいしているのを、
ぼーっと見ているのが至福。
そしてウサギに、同じく、ご苦労なことで、と
話しかける。

一生懸命毛づくろいしているウサギは結構、偉いよ。
やりすぎて、お腹に毛、たまることあるけどね。
(うちのウサギはこれで死にかけました)

posted by ゆうき at 11:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その1

真夜中の白衣1(2)寮内での宴会に届け出??

部屋からラウンジに出ると、古びたソファが
4つほどあり、傷だらけのガラスのテーブルが
中央に置かれていた。

部屋でぼーっとするのに飽きて人恋しくなると、
一人きりの部屋から出て、ソファに座り、
同級生たちととりとめのない話をした。

みんな結構話し好き。

話すだけのつもりが、いつの間にか、ワインや
ビールなどが登場して、宴会になることもしばしば。
(未成年は飲んじゃいけないよ)

もちろんそれは、勉強や実習が忙しくない時期に
限られたけどね。

今は学生寮での飲酒は、届け出がないと禁止?
どこかで聞いたけど、ほんとかな。
(信じられないな)

posted by ゆうき at 11:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その1

真夜中の白衣1(3)白衣購入の通達

入学してからしばらくは、新入生歓迎会、
新入生キャンプなど、恒例の行事があるんだ。

これがまた辛い。
山道で息も絶え絶えになっている時、荷物を
持ってあげようかと言ってくれた同級生!
今でも憶えているよ、ありがとう。

あの時、素直に持ってもらえばよかったなあ。
あの後の登山で、遭難しかかったもん。

霧が突然出てきて、視界が遮られ、周りに人が
全くいなくなって、呆然としたよ。
死ぬかと思った。

それらも過ぎ去り、平穏が戻ってくると、突然、
寮と大学の往復が始まる。

窓から見える緑も、次第に鮮やかになってくる。
グラウンド沿いの杉並木の、煙のような花粉も
なくなり、春も終わりを告げ、そろそろ講義や
実習に気持ちを切り替える時がくる。

「実習に使用する白衣を各自大学の売店で
購入してください」

ある日、そんな通知がきた。

「実習で使用する、所定のスケッチ用紙を
各自大学の売店で購入してください」

そんな通知も同時にきた。
でも、白衣ほどのインパクトはない。

本当はスケッチ用紙の方が最初には必要だったが、
私たちの関心は、白衣。
白衣を買うついでに、そういえば、と思い出し、
スケッチブックを買った。

posted by ゆうき at 11:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その1

真夜中の白衣1(4)医師になるための通過儀礼

上級生たちが白衣の裾をなびかせて、学生寮から
大学までの5分ほどの銀杏並木道を歩くその姿。

新入生たちには白衣姿がとても格好よく見えた。

今は(昔と違って)イケメン揃いだから、尚更だ。

いつか私たちも先輩たちのように、白衣の似合う
人間になりたいものだと羨望のまなざしで見つめた。

医学生たちにとっては、意識を変えるための、
大事な通過儀礼がいくつか存在する。

まず、1年生の最初に、自分専用の白衣を
手に入れること。
解剖学実習を始めること。
診断学実習の前に、聴診器を購入すること。
白衣を着て、聴診器を手に、病棟実習に臨むこと。
最終学年になって、卒業試験と必死で闘うこと。

そして医師国家試験に臨むこと。


posted by ゆうき at 11:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その1

真夜中の白衣1(5)女性用白衣ありません

私たちが通過してきた通過儀礼は、
楽しいこともあったけど、どちらかというと辛いよ。
莫大な数の卒業試験は、本当に大変。
(思い出したくもない)

通過してみれば、懐かしいことばかりだけど、
あの頃、新入生の私たちには、どんな学生生活が
待ち受けているかなんて、想像できなかった。

「女性用の白衣、置いてないみたい」

早速、大学地下の売店で、念願の白衣を
手に入れようと意気込んで行ったのに、
男性用の白衣しか置いてなかった。
(今はもちろん、女性用もあるよ)

「どうする? 注文する?」

私は別に男性用でも構わなかったが、
(そのへん、てきとう)
同級生たちはこだわりがあるらしく、
結局、お店の人にカタログを出してもらった。

とりあえず注文した白衣が到着するまでの
期間を補うために、男性用の左前の白衣を
購入した。

posted by ゆうき at 11:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その1

真夜中の白衣1(6)青白い白衣  

新品の白衣は、ぱりっとした糊がついていて
色も白ではなく、青白い光沢を持っていた。
折り目の線がくっきりと刻まれてもいた。

初めて白衣というものを手にした私たちは、
はしゃぎながら大学を後にした。

白衣一枚、自分のものになっただけで、
医者の仲間入りをしたような、そんな気分に
させられたのだ。

そしてめいめいの部屋に引きこもり、
一人きりで試着して、ポーズをとったものだ。
(分かる分かる、この気持ち)

必要もないのに、部屋の壁に白衣をかける
フックをつくって、上級生たちの部屋を真似た。

これで聴診器でもかかっていれば、ほぼ完成。

輝かしい未来が待ちうけているぞ!
あの頃は、屈託なく、そう思った。

一つ一つのことすべてが新しく、珍しく、
感動に満ちて、輝いていた。
些細なことでも感動する、そんな純粋な
年頃だったのだ。

今はもう、そんな感動体験はなかなか持てないね。

まあうちのウサギが跳ねた瞬間、宙返りなんかしたら、
めちゃくちゃ感動するけどね。
(やってみろよ)
posted by ゆうき at 11:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その1
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。