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真夜中の白衣2(1)夜中にばったり酒郷さん

あれは、初めて白衣を購入してしばらく経った頃。

確か、真夜中の二時ごろに、ラウンジの洗面所で
同級生の酒郷(しゅごう)さんとばったり会った。
(酒郷さんは、気持ちよくお酒を飲んでくれるよ)

あとの同級生たちはもうぐっすり寝入っていた。

その洗面所は、同時に5人ほど顔が洗えるような
大きな場所で、更に薄汚れた巨大な鏡がついていた。
(当時で築17年だったからね)

「今日、何の飲み会だったの?」
酒郷さんのほんのり赤い顔を見て、私は思わず
聞いていた。

酒郷さんは、気持ちよくお酒を飲んでくれるが、
ちょっとした量で、顔や手がほんのり赤くなる。
目元がピンク色になるので、とても色っぽい。

ちなみに私は大量にお酒を飲むと、
次第に青白くなってくる。
むっつり黙っていると、酔っているとは思われない。
周囲の人たちは、それにだまされて、結構、
ひどい目にあっていた。
(ちょい酒乱)

posted by ゆうき at 11:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その2

真夜中の白衣2(2)酒乱の橘さん

当時、私は酔っ払うと、人に迷惑をかけた。
(今はもう、そんな飲み方はしないけどね)

顔色だけで判断する周りの人は、飲んでいないと
判断し、更に酒をすすめるからだ。

余程じゃないと断らなかった私は、つがれるまま飲み、
最後にはあばれた。
(武勇伝はまた後ほど)

ちょっとしたお酒でかわいいと思われる酒郷さんは
それだけで、私の憧れだったのだ。

「今日は、県人会の飲み会だよ」
私の問いに、酒郷さんは、笑いながらそう答えた。

「私も、私も」
実は私も県人会の飲み会で飲んでいたのだ。
飲んでいたんだ、と口で言わなければ、酔っている
なんて、思われないのが悲しいよね。

「だからまだ、起きているんだね」
と、酒郷さんは言った。
posted by ゆうき at 11:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その2

真夜中の白衣2(3)対照的な私たち

酒郷さんも私は、何となく分かりあえる友達だ。
初対面から、通じるものがあった。

でも医学部の6年間は、私たちは
あまりにも対照的だったのだ。

酒郷さんはあっさりとした人で、男の友人も多く、
趣味も多く多才で、服のセンスも抜群。
誰からも好かれた。

そしていつもにこにことしていた。
笑うことに努力を要した私とは、ぱっと見の
印象も異なっていた。

「何怒っているの?」
「いつも深刻な顔をして歩いているよね」
「もっと気楽に考えたら?」

いつも彼女はそうやって私のことを冷やかしていた。

酒郷さんの6年間は、ダンス同好会、タップダンス、
ヨット、お茶など、医学とは無縁の分野ばかり。
それもほとんど極めるからすごいよね。

大学の中でも目立つ人で、交友関係も広く活動的で、
休日になるとキャンプやドライブに出かけ、
ほとんど部屋にいなかった。
(部屋でぼーっとしている姿を見たことはない)
posted by ゆうき at 11:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その2

真夜中の白衣2(4)酒郷さんの放浪癖

もちろん試験前には勉強していたが、
どことなく彼女が机に向かっている姿は、
独特の違和感があった。

遊ぶときには大いに遊び、勉強するときには
集中する。

その切り替えの早さは、とても男性的。
そして彼女はスムーズに試験にパスし、
ストレートで医師になった。

今は、離島の医師である。
男の子も出産し、育児休暇も楽しみ、
今でも人生をとても楽しんでいるようだ。

ヨットで放浪しながら生涯を送りたいらしい。
(やっぱ、変わっているよね)
posted by ゆうき at 11:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その2

真夜中の白衣2(5)酒郷さんのポリシー

「どうせ医者になったら、毎日が医療一色なんだから、
学生時代は医療とは関係のないことをしてみたい」

どうしてそんな生活をしているのか、と真顔で
聞いたら、うーんとうなって、そう答えた。

彼女の楽な生き方、考え方はとても新鮮。
一通りの遊びをし、いろんな分野の人に会い、
自由気ままな生活を楽しんでいた。

逆に私は、医学関係以外の分野に時間をとられる
ことが極端に嫌だった。
医師になりたいと思う気持ちが強すぎて、
それ以外のことには重きをおけなかったのだ。

講義が終わると、ゼミ三昧。
カウンセリング、医療哲学、地域医療研究会、
呼吸器レントゲン、神経難病包括医療、心電図。

授業以外にも、こんなゼミに参加して、
6年を過ごしていたのだ。
当時は、それがいい医師になる最短の道だと
信じて疑わなかったのだ。

酒郷さんと違って、私の交友関係は、医療従事者。
休日はもっぱら、医療関係の読書。

キャンプやドライブは、好きじゃない。
遭難しそうにない山で、遭難するくらいだから。

車窓から見える雲の流れや、夕日の素晴らしさに
我を忘れるという楽しみを、知らなかったのだ。

posted by ゆうき at 11:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その2

真夜中の白衣2(6)学生時代に戻ったら?

酒郷さんとは、考え方も生き方も、全く
正反対だったけど、互いを理解していたよ。

「医療というものを、ここまで真剣に
考えている人も世の中にはいるんだ」
彼女は私を見て、そう思ったらしい。

「こんなに自由な生き方があるんだ!」
私は彼女の姿にびっくりしていた。

どちらがいいのか、分からない。

でも、今の私があの頃に戻れるのなら・・・。
もう一度学生に戻れるのなら・・・。

私はあの時の自分にこう言いたいな。
「偉いね、よくがんばっているね」

そしてこう続けたい。
「でも、もっと自由に生きることも大切だよ」

posted by ゆうき at 11:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その2

真夜中の白衣2(7)多様性って!

医師になって初めて、酒郷さんの生き方の価値に
気付いた。

さまざまな経験をすること。
多くの人に出会うこと。
多くの人に関心を持つこと。

こういうことがどれだけ大切だったか、
今になってようやく分かる。

部屋の中に引きこもって、学校を往復だけして、
自分だけの価値観の中で生きていても、
きっと、人間の幅は広がらないだろうね。

世の中には、多様な価値観を持つ人がいる。
いろんな人を、柔軟に受け入れるためには、
勉強ばっかりしていてもダメなんだ。

ウサギだって、個性は一つじゃない。

立ち耳ぴーちゃんのように、優しくて大人しくて、
穏やかな子もいれば、たれ耳りゅうちゃんの
ように、いつもぶうぶう怒ってばかりいるけど、
機嫌がいいと、べったり甘ったれてくる子もいる。

ウサギだって、いろいろ。
人間だったら、もっといろいろだ。

とにかく、多様性って、素晴らしいことなんだよ!
posted by ゆうき at 11:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 真夜中の白衣 その2
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